フォロワーを3万人に増やしても虚しい理由――「投稿マシーン」になって
なぜ私はSNSを始めたのか
ある日突然、「ニュースレターをやってみませんか」というメールが届き、どうしようか迷いました。正直、文章を書くのが好きか嫌いかと聞かれれば、嫌いです。富山の民放局でニュースキャスターを務めていた時期に、業務命令で出演者ブログを書いていたことがありますが、後輩のアナウンサーから「五百旗頭さん、いい加減ブログをアップしてください」とブログ上で公開説教を受けるくらい、ネットやSNSを使った情報発信は億劫でした。映像制作が専門なので、そもそも書くのは苦手でした。

五百旗頭幸男のXアカウント
宣伝と実験 フォロワーを伸ばすまで
そんな私がツイッター(現X)での発信を始めたのは2020年10月。監督を務めた映画『はりぼて』が公開直後から話題になり、観客動員も好調で、周囲から「今SNSを始めたらフォロワーをたくさん獲得できるよ」と言われたからでした。当初は「面倒臭がりなので」と受け流していました。でも、何度も言われるうちに、宣伝予算が潤沢でないローカル局で今後も映画を公開していくには、お金をかけずに宣伝ができる発信ツールは不可欠かもしれないと思うようになりました。
2020年4月に富山県のチューリップテレビ(TBS系列)から石川県の石川テレビ(フジテレビ系列)に移籍しました。映画『はりぼて』はチューリップテレビ在籍中の2020年3月に仕上げましたが、公開は石川テレビ移籍後の同年8月という少々複雑な事情を抱えていました。別会社に移った私が『はりぼて』の宣伝に関わることはありませんでしたが、石川テレビ製作の映画を宣伝することになる未来を考えると「強い発信力」を戦略的に獲得する必要性を実感していました。具体的な目標は「万単位のフォロワー獲得」。どんな内容や書き方、文字数で、どの時間帯に投稿すれば「いいね」やリツイートされやすいのか。特にバズるネタは何か。どのインフルエンサーがリツイートしてくれたら拡散しやすいのか。そんなことを探りながら、いかに短期間で効率的にフォロワーを増やせるか。試そうと考えました。今だから言いますが、自分を「投稿マシーン」と化して実験をおこなうようなものと割りきっていました。
権力を見つめるドキュメンタリーの「軸」
過去に制作したドキュメンタリーを振り返ると、映画『はりぼて』は政務活動費を不正取得した富山市議14人をドミノ辞職に追い込んだ取材がベースです。番組『沈黙の山』(2018年)は立山黒部アルペンルートの冬期営業という荒唐無稽な計画を進めようとした富山県知事の姿勢を問うたものです。また、映画『裸のムラ』(2022年)では半世紀に2人の知事しか誕生しなかった石川県庁を支配する男ムラの空気を描きました。各作品に通底する軸は「他社にはない切り口や角度、視点で為政者を厳しく見つめること」でした。民主主義を機能させるために、メディアとして果たすべき基本的な役割だと考えてきたからです。その軸から外れないことをルールにして、政治や社会関連のニュースのなかで疑問に感じたことを頻繁にツイートしていきました。
拡散の代償 誹謗中傷と心の消耗
実験は成功しました。